インタビュー
グランディア芳泉代表取締役専務 山口賢司さん(50歳)
1965年生まれ。あわら市(旧芦原町)出身。早稲田大学卒業後、大手銀行へ入行。27歳で地元へUターン。家業であるグランディア芳泉の経営に携わる。
地元企業として、ローカルな視点から
地域社会にメスを入れたい。
高校を卒業し、大学進学と同時に福井を離れました。もともと経営に興味があり、大学で経営学を学び、大手銀行に入って営業職に就きました。
27歳の時に、福井に戻り家業を手伝うことになりました。旅館業は地域社会と切っても切れない関係です。お客さまに提供する食材は、地元産のものが中心。越前がにや甘えびなどはもちろん、野菜や米もそうですよね。雇用面でも地域の人材を雇う立場ですし、観光もとても重要です。旅館業は、地域社会とは切り離せないローカル企業。そのため、自ずと地域社会に目を向けるようになっていきました。これまで、地元の企業として地域のために貢献したいと考えてきました。地方は都会に比べて、どうしても生産性が低い。ローカルな視点を持って、生産性をあげることが大切だと感じています。ローカル企業として何ができるのか。そこから地域社会にメスを入れたいですね。
木質バイオマスを観光資源に。
付加価値をつけることが必要。
温泉旅館業は、エネルギーを大量に利用します。経営コストにおいて重油価格の割合が大きく、世界的な変動により価格が不安定な点も経営者としても悩ましいところでした。そうした折り、マルツ電波の土谷社長からお誘いいただき、木質バイオマスという新しいエネルギーに可能性を感じてプロジェクトへの参加を決めました。
旅館業としては、まずはコスト削減を期待しています。一方で、こうした試みは時代の先端をいくものなので、観光資源としても期待できると思います。木質バイオマスエネルギーの利用を地域の観光資源ととらえ、付加価値をつけていくことが必要です。
しかし熱供給事業なので、お客さまが直接的に「木」を実感できるわけではありません。薪ストーブのように視覚的に炎のゆらぎを楽しめるわけではなく、森林浴のように森の香りを味わえるものでもない。また、あわら温泉は山や森から遠いところにあるため、森をイメージしにくい立地です。木質バイオマス利用の魅力を、どうやってお客さまに伝えるのか。どのようにして「目に見える形」に持っていくのかが課題ですね。
エコツーリズムの可能性。
ストーリーづくりが鍵となる。
木質バイオマスを軸としたエコツーリズムに可能性を感じています。しかし、あわら温泉の周りには森がないため、どうやって観光と結びつけるのかが難しいですね。体験価値をどのように生み出し、どう観光につなげていくのか。ターゲットを明確にしたストーリーづくりが大切です。
物語の書き方は、何通りもあります。旅館業は観光にいらっしゃるお客さまと接する仕事であり、衣・食・住すべてに関係性のある業種です。だからこそ、旅館業にしか作れないストーリーがあると思います。旅館業としてやれることをやっていきたいです。